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本革 – Genuine Leather について

本革 – Genuine Leather

革製品には 牛・馬・ 豚・鹿・羊・山羊・カンガルー・蛇・ダチョウ・ワニ などが使用され、最も一般的な 牛革は 食肉加工される際に剥がされた皮(原皮)を利用しており、牛の年齢や性別によっても異なるが、特徴としては肉厚で耐久性に優れている。

国内で加工されている牛革は大半が輸入されており 自給率が100%なのは豚皮のみ。

革製品についている Genuine Leather ( ジェニュイン レザー ) のマークは、牛の皮を剥いだ状態 ( Cow Hide ) がモチーフで、正真正銘の革 であることを表している。

原皮の加工

牛革は生後6ヶ月程度にものを カーフスキン、生後6ヶ月以上2年以内のものを キップスキン、生後2年以上で出産経験のある雌牛は カウハイド、生後2年以上経過した去勢された雄牛が ステアハイド など、牛の年齢によって種類があり、皮革として多く使用されているのは ステアハイド で、食肉として加工される際に剥がされた皮(原皮)は、腐敗を防ぐために塩漬けにされた後、皮に残っている肉や脂肪を除去し、石灰に漬けて柔軟性を与えるなど、鞣し加工をする準備工程に入る。

  1. 水漬け
    塩漬けなどの防腐加工で失われた水分を補い、同時に表面の洗浄を行う。
  2. フレッシング(裏打ち)
    皮に付着している肉や脂肪を取り除く。
  3. 石灰漬け
    皮の脂肪除去、脱毛処理の他、コラーゲン繊維をほぐし柔軟性を与える。
  4. スプリッティング(分割)
    銀面(表面)と床皮(肉面)の2つに分割する。
  5. 再石灰漬け
    分割後、再び石灰に漬け、柔軟性を与える。
  6. 脱灰
    塩化アンモニウムなどで皮に残っている石灰を取り除く。
  7. 酵解
    銀面を滑らかにする酵素処理が行われる。

皮から革へ – 鞣し加工

(スキン)は生き物の原皮、(レザー)は 原皮を鞣したものに用いられ、「鞣し」は原皮を柔かく腐敗しないようにする技術で、人類は原始時代から皮を革に変える技術を発達させ、現代では タンニン鞣しクロム鞣し が使われているが、クロム鞣しはタンニン鞣しよりはるかに効率的・低コストで運用できるため、世界で生産されている革の8割以上がクロム鞣しで加工されている。

  • タンニン鞣し
    タンニンは植物に含まれる化合物で、皮の主成分であるコラーゲン(タンパク質)と結合して変質することで、皮が腐敗せず柔らかくなる。
    準備工程を終えた原皮をタンニン鞣し剤が入った大きな水槽(タンニン槽)に浸して、皮の深部までタンニンを浸透させるが、1つのタンニン槽に漬け込むのではなく、タンニンの濃度が異なる「ロッカー槽」「レイヤー槽」「ホットピット槽」と3種類のタンニン槽に漬け込んで鞣すため、労力と時間が掛かる。
  • クロム鞣し
    クロム鞣しは鞣し加工に革新をもたらした技術で、準備工程を終えた皮をピックル(浸酸)という酸性の溶液に付けて皮の状態を酸性にし、クロム鞣し剤を使用して鞣し、酸性になっている皮をアルカリによって中和、次に染色と皮に油分を与える加脂が行われ、革に含まれる余分な水分を絞って乾燥させる。
    乾燥した革に適度な水分を与え、ステーキングという革を揉みほぐす作業が行われ、再び乾燥した後に仕上げ作業を行い、銀面に塗装する。

タンニン鞣しは黄~褐色の「革」らしい色になるが、クロム鞣しはブルーグレーのような色になるため染色が行われる。

よくタンニン鞣し至上主義的な記事を見かけるが、タンニン鞣しがクロム鞣しに比べて優れているのは、天然素材だから環境に優しいという点で、革の変色 や艶などは特徴に過ぎない。

ヌメ革

タンニン鞣しで仕上げた革の代表が「ヌメ革」で、タンニンには紫外線を受けると色が濃くなるという性質があるため、タンニン鞣しの革は使い込むほどに茶褐色へと変化していく。

ナチュラルレザーとも言われ、染色されていないベージュのものは、使い込むほどに色が変化し「革を育てる」楽しみがあり、タンニン鞣しの特性から素材そのものが丈夫で、樹脂を使用していないため経年劣化もなく、長く使い込むことができる反面、非常にデリケートで傷やシミがつきやすい。

エイジングによる革の変色は、革に浸透しているタンニンが多いほど色の変化が大きくなり、使用するタンニン鞣し剤はによっても発色が異なる。

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エナメル

クロム鞣しで仕上げた革の代表は、ハイブランドの製品で合皮以外に多いエナメル革で、エナメル革が特許を取得しているためパテントレザーと呼ばれている。

エナメル革はポリウレタン樹脂エナメルでコーティングされた皮革で、革にポリウレタン樹脂を幾重にも塗布するため、ピカピカになるだけでなく、革についている傷なども隠れ、水にも汚れにも強いという特徴があり、加工するコストはかかるが、少々のムラや傷のある革も使用できるメリットがある。

エナメルに似た革に「ガラス革」があり、本来は傷が多く製品に使えない皮を鞣した後、傷のある表面(銀面)をヤスリで削り、ガラス板 に張り付けてから樹脂でコーティングするもので、エナメル同様に表面が樹脂でコー ティングされるのでツヤツヤになるが、ガラスという名称は製品にツヤがあるからではなく、工程途中にがラス板を使用していることに由来する。

メリットの多い樹脂コーティングだが、経年劣化は避けられず、長期間の保管や使用状況によっては、表面がベトついたり、白く曇ったようになる可能性がある。

染料と顔料

皮革製品の染色には「染料」と「顔料」があり、大きな違いは「水や油に溶解するか否か」で、溶解するものは「染料」、溶解しないものが「顔料」と呼ばれている。

歴史が古いのは 顔料で、紀元前 1 万 5000年ほどの洞窟壁画には、赤土、黄土のような土や貝殻を焼いた粉(胡粉)、黒鉛などの天然鉱物を原料とした最古の顔料が使用されており、儀式や呪術などでフェイスペイントに使用されていたことから「顔料」と呼ばれるようになった。
染料は エジプトのピラミッドで発見された紀元前 4000年頃の藍染された麻布が古く、1600年頃の 古代フェニキアの特産だったミュレックス という巻貝から取れる貴重な紫色の染料「貝紫」などが有名。

顔料は水に溶けず浸透することがないため一般的には接着剤で色素を固着させているのに対し、染料は水溶性なので色素が繊維組織の内部に浸透している。

顔料はペンキ、染料は食紅など食品用の着色料をイメージすると分かりやすい。

顔料は色素で表面が覆われるため 耐光堅牢性や耐湿潤堅牢性が高く 均一的で美しい仕上がりになる反面 剥がれやすいというデメリットがあり、染料は下地に浸透するため 素材の風合いを活かすことができるが、水溶性なので水に浸かると色落ちや色ムラになる可能性がある。

皮革製品の多くは短時間で染色できて実用的な顔料が使用されており、染料は 「銀付き」という皮膚の表皮(銀面)を自然のまま活かした素材に使用されることが多い。

革の経年変化(エイジング)は「タンニン鞣し + 染料」でないと楽しめないが、「銀付き」「タンニン鞣し」「染料」とコストと時間がかかる製品になるため、顔料を使用した製品と比較すると割高で 「タンニン鞣し + 染料 = 高級品」「クロム鞣し + 顔料 = 安物 」といったイメージを持っている人もいるが、「クロム鞣し + 顔料」の製品が多いのはコスト面も含め「タンニン鞣し + 染料」の製品に比べて堅牢性があり、「買ったときの美しさ」を維持でき、メンテナンスも行いやすいなどのメリットがあるからで、高級・低級 といった括りで分けられるものではない。

本革の手入れ

本革のコンディションを維持するためにはオイル入れなどの手入れが必要だが、日常的には ブラッシング乾拭き を行い、表面が乾燥してきた場合はオイル入れをする。

ラナパーの取説には、靴の場合「1週間から10日に1回の割合で使用してください。」と記載があるが、手入れで重要なのは「革の状態」に応じたケアで、◯日に1回というルーチン化では適切なケアは行えない。

牛革スムースレザーの革靴であれば、クリーナーや乳化性の靴クリームを使用するが、財布や鞄、家具などは、デリケートな革にも利用でき保革効果のあるクリーナーや、デリケートクリームを使用する。

  • サフィール レザーローション
    ヌメ革を含めスムース革全般で使用可能で、蜜蝋などの保革成分が入っている使い勝手の良い万能クリーナー。
  • ラナパー
    蜜蝋やラノリン(羊毛脂)などのほか鉱物油のワセリンを主原料にしているのが特徴で、手軽に「保革、撥水、抗菌、艶だし」が行えるが、クリーナー成分は含まれていないため、汚れ落としの効果はない。
  • デリケートクリーム
    浸透性が高くシミになりにくいため、ヌメ革・ゴートスキン・シープスキンなどデリケートな銀付き革製品やアリニン染めの製品向けのケア用品。
  • コロニル レザーソープ
    界面活性剤を主成分としたムースタイプのクリーナーで、スムースレザー製品全般に使用可能。

「銀付き」は 皮膚の表皮(銀面)を自然のまま活かしたもので、表皮にキズ等が少ない原皮を使用し、銀面の表情を消さないために、水溶性の染料を用いて染色される(本染め)のが特徴。
「アリニン染め」は染料の一種で、顔料を用いた製品と比較して「水に弱く」「シミになりやすい」というデメリットがある反面、樹脂などによる人工的な光沢ではなく、透明感のある革本来の自然なツヤと質感が得られる高級革の代名詞。

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人工皮革・合成皮革 – Faux Leather

人工皮革 は 化学繊維に合成樹脂を浸透させるのに対し、合成皮革 は 天然素材に合成樹脂を塗布したもので、総称して 人造皮革 と呼ばれるが、一般的には 合皮 ということが多い。

近年は 人造皮革 を「レザー」という表記で販売しており、特に10代~20代前半の世代は人造皮革を「レザー」と呼びことが多く、ユニクロでは「ネオレザー」、他のカジュアルショップも「ニューレザー」などの紛らわしい名称を使用しているが、品質表示には「合成皮革」と表記されている。

人造皮革は 本革 の 10分の 1程度のコストで生産が可能で、製品の重量も非常に軽く、雨に濡れてもシミにもならず、メンテナンスも必要ないが、人造皮革に使用されている樹脂は経年劣化するため、早ければ 3 年程度で表面の樹脂にヒビ割れが生じて剥離を起こす。

劣化の速度は樹脂の成分などによって異なるが、樹脂の多くは 湿気と高温に弱いため、悪条件下では使用していなくても劣化が進行するので、長期間使用しない場合は定期的な陰干しが必要。

ハイブランドの製品でも内張りには人造皮革を使用している事が多く、箱に入れて大事に保管しておいたのに、久しぶりに 取り出したら内側がベタベタという事例が多いのは、樹脂の経年劣化が原因。