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ヌメ革のエイジングと手入れ方法

ヌメ革の特徴

ナチュラルレザーとも呼ばれるヌメ革は、原皮をタンニン鞣しで仕上げ、ほとんど加工していない状態のもので、そのデリケートさを含め、エイジング を楽しめる人気の素材。

タンニンは植物に含まれる化合物でタンパク質と強く結合する性質があり、タンニン鞣しは皮の主成分であるコラーゲン(タンパク質)をタンニンで変質させ、皮の腐敗を防ぎ柔軟性を与える手間と時間のかかる手法。

タンニンには紫外線を受けると色が濃くなるという性質があるため、タンニン鞣しの革は使い込むほどに茶褐色へと変化していくが、タンニンの発色は均一ではないため、多少の濃淡(色ムラ)がでる。

使用前の日光浴

ヌメ革の製品汚れ防止にパラフィン加工(蝋引き)をしているものもあるが、万全な防水・防汚効果が得られるものではなく、ヌメ革本来の防水・防汚効果を引き出し、きれいなエイジングを行うためにも、使用前の日光浴は必須。

  1. 日光浴の期間は日照時間や日差しにもよるが約 1 ヶ月程度で、付属のパーツも含めて焼き残しがないよう 日光が当たる面を変えながら、ベージュから茶褐色へと変色するまで全体的に日焼けさせる。
  2. 日光浴で良い色に焼けたら、濡れタオルで軽く水分を含ませる感じで手早く全体を拭き、完全に乾くまで半日ほど陰干しする。
  3. 乾燥したら最後の仕上げに デリケートクリーム を全体的に薄く伸ばして馴染ませ、表面を磨く感じで乾拭きして完成。

水拭きもデリケートクリームを馴染ませる際も、ヌメ革が水もクリームも吸収し、シミができたようになるが、一箇所に大量の水やクリームを付けない限り、乾燥すれば自然に消える。

日光浴をするとヌメ革に自然な光沢が出るだけでなく、製品自体に水や汚れに対する抵抗力が向上すると同時に、血管の後が黒い汚れのよう筋になって目立つほか、生前の傷、関節部のシワなど原皮の個性が現れる。

ヌメ革の手入れ

日常的な手入れは ブラッシング と 乾拭き だけでよく、過度なオイル入れはカビが発生する原因になるが、油分が不足すると防水・防汚効果が低下してわずかな水滴でもシミになったり、表面がひび割れを起こす可能性もあるため、きれいにエイジングするためにも適切なオイル入れが必要。

デリケートクリーム
浸透性が高く、シミになりにくい銀付き革製品向けのケア用品。
サフィール レザーローション
ヌメ革を含めスムース革全般で使用可能な保革成分が入っている万能クリーナー。
コロニル レザーソープ
界面活性剤を主成分としたムースタイプのクリーナーで、スムースレザー製品全般に使用可能。

革の表面にザラつきを感じたら油分が不足しているので、デリケートクリームやレザーローションでオイル入れをする。
エイジングには手垢も一役買っているが、財布・名刺ケース・パスケースなど触る機会が多いアイテムは手垢も付きやすいため、定期的にクリーナーを使用するか、オイル入れにクリーナー効果のあるレザーローションを使用する。

  1. 革の表面に付着しているホコリを払うようにブラッシング。
  2. クロスで軽く乾拭き。
  3. クリーナーは必ずクロスに付け、軽く馴染ませてから革に使用する。
  4. クリーナーを使用した場合は完全に乾いてから、デリケートクリームをクロスに少量つけ、円を描くように薄く伸ばしながら全体的に均等に塗っていく。
  5. クロスで浸透しなかったクリームを取り除きながら、表面の油膜を均一にするような感じで全体を磨く。
  6. 磨き終えたらしっかりと形を整えて、乾燥するまで陰干しする。

オイルが不足している状態だとスポンジのように吸収していくが、同じ箇所で重ね塗りせず、全体に薄く塗る作業を繰り返し、磨く際に力を入れたり、強くこすったりするのは厳禁。

上図で黒く汚れているように見えるのはカビで、過度にオイル入れを行っていると発生しやすく、一度発生すると除去するのは困難なため、保管する際は湿気の多い場所を避け、使用頻度が低い場合は定期的に陰干しする。

雨など水に濡れた場合の対処

ヌメ革はしっかりメンテナンスをして2年ほど使用していれば、革の表面に形成された油膜が水滴を弾いてくれるため、少々の雨くらいなら革についた水滴を拭き取るだけで良いが、使用期間が1年未満の場合は使用前に日焼け処理をしていても、早い段階で水滴を拭き取らないと水分が革の内部に浸透して輪染みができる。

輪染みになると水洗いしても完全には取れないため、水に濡れた場合は次の手順でメンテナンスを行う。

  1. 雨などの水滴が革についたら、できるだけ早く水滴を拭き取る。
  2. 革に浸透した水分を均等にするため、タオルなどを水に濡らして水滴が付いた付近を中心に全体を水拭きする。
  3. 陰干しして乾燥してからオイル入れをする。

水滴が付いてから水拭きするまでの時間は、早いに越したことはないのだが、1時間程度ならシミにならずに処置できる。

水漬け

ヌメ革のカバンや財布が水没するなどして残念な感じのシミができた場合は、完全に水を吸収させることで幾分かはマシになる可能性がある。

  1. シミができた革製品を1日ほど水に漬け、全体に水分を吸収させる。
  2. 水を吸収したら軽く水を切って表面をクロスで拭き、型を整えてから完全に乾燥するまで陰干し。
  3. 乾燥したら油分が抜けているのでデリケートクリームでしっかりとオイル入れをする。

乾燥する際ドライヤーなどは革が割れる原因になるため使用は厳禁。

水漬けに関しては「革の硬化と型崩れ」のリスクはあるが、シミができて使わなくなるようなら、試してみる価値はある。