食・健康

トランス脂肪酸の問題と摂取量

トランス脂肪酸の概要

トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の一種で、工業的に加工された植物油や動物脂肪の一部に含まれ、通常の不飽和脂肪酸とは異なり、消化される過程で体内に蓄積されやすく、LDLコレステロールを増加させ、HDLコレステロールを減少させることが知られており、食品中のトランス脂肪酸の摂取が増加すると、心臓疾患・脳卒中・2型糖尿病・肥満・炎症性疾患などのリスクを高めることが示されているほか、子どもの発育に悪影響を及ぼす可能性があることも報告されている。

世界保健機関(WHO)はトランス脂肪酸の摂取量を制限するよう勧告しており、多くの国や地域で規制され、食品業界が低減に取り組んでいる。

トランス脂肪酸を多く含む食品

  • マーガリン
  • ショートニング
  • 油揚げ、天ぷらなどに使用される揚げ油
  • 冷凍食品やインスタント食品
  • スナック菓子、クッキー、ドーナツ、パイなどの菓子類
  • ファーストフードや揚げ物などの加工食品

マーガリンに含まれるトランス脂肪酸

マーガリンに含まれるトランス脂肪酸の量は製品によって異なるが、現在の日本では多くのマーガリン製品がトランス脂肪酸を含まないように製造されており、製品によってはトランス脂肪酸の含有量がバターよりも低く抑えられている。
一方、海外のマーガリンやショートニングにはトランス脂肪酸の含有量が多いものがあるため注意が必要。

日本での平均的なトランス脂肪酸の摂取量

日本では 2011年に消費者庁が トランス脂肪酸に関する情報開示に関する指針 を策定し、食品業界や消費者に対してトランス脂肪酸が含まれる食品の情報提供が行われるようになり、多くの食品メーカーがトランス脂肪酸の含有量を低減する取り組みを行っており、日本国内での平均的なトランス脂肪酸の摂取量は、厚生労働省の 2019年 日本人の食事摂取基準(2020年版)においては、男女ともにトランス脂肪酸の摂取量が目安値以下であることが示されている。

トランス脂肪酸の平均摂取量(エネルギー比)

海外と日本ではトランス脂肪酸の摂取量に大きな差があり、海外では過去にトランス脂肪酸を多く含む食品が広く消費されており、健康被害が問題視されるようになってからも法規制の遅れなどで健康被害が増加するなどの問題が発生しているが、日本ではトランス脂肪酸の健康被害が問題視されるようになった2000年代以降、食品メーカーや政府機関が積極的に取り組み、トランス脂肪酸の含有量を限りなく低く抑えるように努めている。

アメリカ:2.2%
イギリス:男 1.3% 女 1.2%
日本:0.3% 

食品安全委員会「食品中に含まれるトランス脂肪酸」評価 によると 日本人成人のトランス脂肪酸の平均摂取量は、エネルギー比で  0.3% エネルギー程度に留まり、世界保健機関(WHO)やアメリカなどで推奨されている 1.0%未満 を下回っている。
ただし、若年層や女性には 1.0% を超える集団があることも報告されており、脂質に偏った食事だけでなく、ファストフード・加工食品・外食 にも注意が必要。