社会・時事

地球温暖化の問題

地球温暖化の原因

地球温暖化は大気中の二酸化炭素・メタン・一酸化窒素など温室効果ガスが増加することによって引き起こされる地球規模の気温上昇で、温室効果ガスは地表から放出される熱エネルギーを一部吸収して大気中にとどめ、地球の温度を保つ役割を果たしている。

地球温暖化の主な原因は人間の活動による温室効果ガスの排出で、化石燃料の燃焼、森林伐採、農業、産業プロセス、廃棄物の処理などが大量の温室効果ガスを放出しており、2021年に国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は 地球温暖化に関する報告書 で地球温暖化の原因が人間の活動によるものと断定

地球温暖化のエビデンス

地球温暖化の進行によって、氷河・氷雪の融解、海面上昇、降水量の変化、気象災害の増加などが懸念されており、生態系や人類の生活に深刻な影響が生じる可能性が高いとされ、地球温暖化の影響は実際に気温上昇や海水温の上昇などで現れている。

気象庁 衛星海面高度計における1993年以降の海面水位変化

1850〜1900年を基準とした世界平均気温は2011〜2020年に1.1℃上昇し、気温の上昇によって氷河や氷雪が融解して海面上昇を引き起こしているほか、海水温の上昇によって海洋生物の生態系や分布に変化が生じており、世界気象機関(WMO)は洪水や干ばつなど世界の気象災害が過去50年間で5倍に増加したと発表

1.5℃上昇と2℃上昇の違い

2018年の IPCC 1.5℃特別報告書 では地球温暖化による気温症状が1.5℃と2℃で大きな違いがあると予測している。

  • 人間が居住する大くの地域における極端な高温の増加
  • いくつかの地域における強い降水現象
  • いくつかの地域における干ばつと降水不足の増加
  • 種の喪失及び絶滅のリスク上昇
  • 海洋酸性度の上昇と海洋酸素濃度水準の低下による生態系や漁業資源のリスク増加

日本国内では大型の台風や豪雨による被害の増加のほかにも、桜の開花時期、サンマの不漁など身近に変化を感じられ、海外でも近年は毎年のように熱波や洪水、干ばつ、寒波、山火事・森林火災、ハリケーンなど気象災害による甚大な被害が発生している。

氷期と温暖期

地球は気温が低い氷期と気温の高い温暖期のサイクルが地球軌道の離心率や傾斜角の変化によって約100,000年周期で繰り返されているほか、地球軌道の傾斜角の変化によって約41,000年周期のサイクルがあり、地球の気温が最も高かったのは 熱帯の楽園 と呼ばれる約3500万年前から2400万年前の 中新世中期 で、最も寒冷な時期は 最終氷期の最寒冷期と呼ばれる約2万年前から1.8万年前の 後期更新世(第四紀氷河期)になる。

最終氷期の最寒冷期 以降は温暖化が進んでいるが、約1.2万年前から現代まで続く 完新世 は氷期で、現在は気候変動によって氷期と氷期の間に生じる比較的温暖な 間氷期 に入っているが、現在の氷期中の過去1000年間は 小氷期 と呼ばれる寒冷な時期と、中世温暖期 と呼ばれる温暖な時期が交互に訪れている。

氷期と温暖期の温度差は地球全体の平均気温で5℃から10℃程度の変化があり、温暖期は現在の気温よりも3〜4℃高かく、最終氷期の気温は現在より約6℃低かったと推定されている。

温暖化対策

中世温暖期は現代よりもやや暖かかったとされているが、自然変動によって変化する気温と異なり、人為的な要因による近年の温暖化は過去数千年間と比較して異常な速度で進んでおり、生態系や人類の生活に深刻な影響が生じる可能性が高いため温暖化対策への取り組みが求められている。

パリ協定

パリ協定(COP21)は世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃以下に抑え、可能な限り1.5℃に近づけることを目的として、2015年にパリで採択された地球温暖化対策の国際的な枠組みで、各国は自主的に温室効果ガス排出削減目標(国別貢献)を設定し、5年ごとに見直しを行うことになっている。

脱炭素化

温室効果ガスの大半は化石燃料の燃焼などによる二酸化炭素の排出によって生じているため、電気自動車や再生可能エネルギーなどの低炭素技術の普及、ライフスタイルや社会システムの変革などによって 二酸化炭素の排出をゼロにする取り組みで、日本は2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする目標を掲げている。

気象庁の観測点における大気中二酸化炭素濃度及び年増加量の経年変化

世界気象機関(WMO)の 温室効果ガス年報(第17号)によると 二酸化炭素の世界平均濃度は 1750年以前の平均値(約278ppm)と比較して 2020年は 413.2 ppmで 49%増加している。

カーボンニュートラル

カーボンニュートラルは 人為的活動によって大気中に排出される二酸化炭素(CO2)と大気中から吸収される二酸化炭素の量を同等にしてゼロの状態にすることで、温室効果ガスであるCO2を削減するだけでなく、森林や海洋などの自然の吸収力の向上や人工的に二酸化炭素を回収することが求められる。

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温暖化対策の問題

二酸化炭素は大気中に長期間存在し、現在の排出量を削減しても過剰な現在の温室効果ガスの濃度を下げることはできず、すでに上昇している温度を下げることもできないため、これ以上 状況を悪化させないためにも温暖化対策は積極的に取り組むことが求められるが、政治的な問題や経済的な問題などで各国の足並みが揃わず、途上国では財政面の課題もあって国際的な合意が遅れている。

2021年の 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では 世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5℃に抑える努力を追求し、石炭火力発電を「段階的削減」する と、二酸化炭素の排出量の多い石炭の使用削減にはじめて言及した グラスゴー気候協定 が採択されたが、各国が約束した1.5℃に抑えるための取り組みを確実に実施しても、地球の平均気温は今世紀末までに2.4度上昇すると試算 されており、気象災害や生態系への影響が懸念されている。